基金つくり全員救済を

 神奈川2陣の東京高裁判決は国に対して、一審では対象にされなかった一人親方への頁任も認め、64人の原告全員が救済されました。国には13回目の断罪で、アスベスト被害への国の責任はもはや疑いのないものになりました。
 命のあるうちに
 建材メーカーの責任も広く認めました。粁告義務違反については、解体や改修時の被害についても認められました。解体・改修作業に伴う被害者は、今後増大が懸念されます。この点でも今回の判決は高く評価できます。
 国とメーカーの責任を広く認めたこの判決は、被害者全員救済にむけた大きなインパクトになります。
 神奈川2陣の被害者原告のうち、6割以上が解決を見ることなく死亡しています。事は急を要します。命あるうちに救済しなくてはなりません。被害者が今後2万人から3万人にもなるとされる全国の建設アスベスト被害全体をどう解決するのか。いよいよ解決策を導き出す時です。
 裁判を通じた解決では被害者全員の救済はなかなか進みません。国は2018年、大阪の石綿製造工場で働いていて労災認定された約2千人全員に、「最高裁判決に従って裁判提訴をすれば和解して支払いを行う」との通知を出して提訴を案内しました。1年半たった今でも裁判を起こしたのはその4割です。
 建設アスベスト被害者は万単位でIケタ迎います。被害者に裁判を起こさせるのでなく、申請すれば救済される制度を国がつくるべきです。それには、国と建材メーカー全体が拠出する救済基金をつくることが必要です。
 実現可能な方策
 この点で参考になるのは、1972年の四日市公害判決を踏まえて創設された公害健康被轡補償法(公健法)に基づく補償制度です。指定地域に居住し指定疾病を発症した被害者を公害患者と認定し、国とともに、全国約8千の事業所からの汚染物質排出摂に応じて発生源企業から徴収した賦課金を財源として補償給付が行われています。建設アスベストの場合も、各メーカーにアスベスト使用量に応じて拠出を求めるべきです。
 公健法はその後新規認定は打ち切られましたが、救済は今も続いています。企業の負担額は最高時には1年で1千億円でしたが今では年間で300億円程度です。建設アスベスト被害の場合、私たちが提案している拠出金の予想シミュレーションでは、現在の認定患者7000人全員が補償基金に請求したと仮定しても公健法による救済よりも少なくてすみます。実現可能です。
 今年度中にも神奈川1陣の最高裁判決が予想されます。国は、最高裁判決を待つことなく、被害者の命があるうちに補償基金制度をつくる決断すべきだと、声を大にして訴えたい。

(しんぶん赤旗 2020/9/26より)

 

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