コロナ禍の中 学生怒り 国立大授業料自由化 議論加速 「学費値上げありき」 畑野議員が検討撤回迫る

コロナ禍の中 学生怒り 国立大授業料自由化 議論加速
「学費値上げありき」 畑野議員が検討撤回迫る

2020年6月8日【2面】

 文部科学省内で国立大学の授業料を自由化する議論が勢いを増しています。新型コロナウイルスが学生生活に打撃を与えるなか、学生からは「問題をより深刻にする」と怒りの声が上がります。日本共産党の畑野君枝議員も衆院科学技術特別委員会で自由化の検討撤回を迫りました。

 議論の舞台となっているのは文科省の「国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議」です。委員には安倍政権で社会保障削減や規制緩和の旗振り役をしている「経済財政諮問会議」、「規制改革推進会議」、「未来投資会議」のメンバーがずらり。授業料自由化など大学の経営基盤にかかわる設置基準から、学長や学部長の選考方法といった大学自治にかかわることがらまで、年内をめどに見直しの方向を取りまとめようとしています。

 座長の金丸恭文フューチャー会長(未来投資会議議員)は国立大学の設置基準を“岩盤規制”になぞらえ「まずはこの会で覚悟を決めて文科省に迫り、文科省が覚悟を決めてその他各省とかと交渉する」と強調。同省も、法改定が必要ない検討事項は検討会議の確認が取れしだい見直しに着手する構えです。授業料自由化は省令で変更可能なため法改定は必要ありません。

 畑野議員は5月28日の科技特委の質疑で、授業料自由化は高等教育の漸進的無償化を定めた国際人権規約に逆行していると批判しました。

 畑野 国立大学の授業料は、国が定める標準額の120%の範囲内で各大学が定めるが、現行でも値下げには下限がない。検討会議がしているのは値上げ自由化の議論だ。

 川中文治文科省審議官 授業料の上げ下げも含めいっそう柔軟な取り扱いを可能とするか議論している。

 畑野 いまでも下限はない。120%の歯止めを取り払うようにしか見えない。

 値上げの自由化をごまかす文科省に、畑野氏は5月22日の検討会議の議論を突き付けました。学生定員の自由化が議論となった同日の会議では、政府の総合科学技術・イノベーション会議の議員を務める上山隆大氏が「私はレッセフェール(自由放任主義)の信奉者。全てを基本的には自由にすべきだ。授業料も学生数も」などと発言。他の委員からも授業料自由化を求める発言が相次いでいました。(表)

 国立大学は、憲法が定める教育を受ける権利を保障するための高等教育機関としての役割を担い、財政措置は国が責任を持っています。2004年の法人化後もこうした役割は変わっていません。

 国立大学の授業料設定に上限があるのは経済的理由で権利を奪わないようにするためです。上限を外し、自由化することは、国立大学のこの役割を放棄することになり、国の財政措置の根拠も弱まります。

 畑野氏は、検討会議の議論は「学費の値上げありきだ」と批判。「授業料自由化は検討事項から削除すべきだ」と訴えました。

学ぶ権利・研究の自由損なう

全国大学院生協議会の梅垣緑議長

 検討会議の議論に一貫しているのは、大学を「経営する」発想であり、高度に公共的な教育・研究の場である大学を、企業的な経常利益の追求と成長と競争の論理に矮小(わいしょう)化させる発想です。国民の高等教育を受ける権利を保障する基盤としての国立大学の意義がこぼれ落ちています。

 新型コロナで明らかになったのは、日本の学生の学ぶ権利がいかに危ういものかということです。200を超える大学で学費減免などの署名が起きた背景には、日本の異常な高学費の問題があります。世界でも、学費返還運動が起きているのは米国、英国、韓国など高学費の国です。

 国立大学の運営費交付金の傾斜配分が年々強まるなか、学生定員や授業料を自由化し大学に「自己責任」を求めれば、授業料は標準額の120%を大きく超えて値上げされるでしょうし、地方の国立大学はどんどんつぶれていくでしょう。学生・院生の学ぶ権利、研究する自由は大きく損なわれます。

(しんぶん赤旗 2020/6/8より)

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