子どもの人工肛門の装具 障害者手帳なくても公費助成を
神奈川 母親が声上げる 「毎日の生活に欠かせない」
2020年11月26日【社会】
子どもの人工肛門の装具の費用負担について、福祉制度での補助の対象を広げるなどの改善を求めて一人の母親が声を上げています。
(西口友紀恵)
神奈川県の川上ゆうこさんは、子ども(2)が約1年半の間、病気の治療のため人工肛門になりました。人工肛門では、体外で便を受け止める袋が毎日の生活に欠かせません。
この袋には福祉制度で補助がありますが、生涯人工肛門の人が対象です。身体障害者手帳を取得し、市町村から給付を受けるしくみです。
「わが家の場合、当初、将来閉じる可能性があるとして全額自己負担でした」と川上さん。1カ月で必要な袋は約20枚。1枚約500円で、そのほかに必要な衛生材料などを入れると負担は月約1万5千円にもなりました。
年15万円超
「一時的人工肛門で補助が受けられず、年間の自己負担が15万円を超えると話す親は周りに少なくない」と話します。
親の負担は袋に限らず、経済的にも精神的にも大きなものがあります。「難しい病気の子どもを診てもらえる病院と医師が少ないため、県外の病院に通院・入院するたびに交通費や入院の付き添い経費などさまざまな費用がかさみました。地元でも人工肛門を理由に引きこもりがちでした」
茨城県では県独自の事業で一時的人工肛門の場合も補助しています。川上さんは同じように手だてを講じてほしいと、地元の首長と面談、県知事にも要望書を出しましたが認められませんでした。
健康保険適用の道も模索しました。表皮水疱(すいほう)症の患者団体が運動にとりくみ、10年前、ガーゼや包帯などの衛生材料が保険適用になったと知ったからです。
何度も要望
厚生労働省の関東信越厚生局に書面で何度も要望しました。「1年間やりとりをして分かったのは、健康保険法を改正しないと適用にならないということでした。おとなにも一時的人工肛門で補助の対象外とされて負担に苦しんでいる人がいます。何とか改善してほしい」と川上さん。後につづく親たちのことを思い、発信を続けています。
「困っている母親たちが迷いなく声を上げられる社会になってほしい。医療、福祉、自治体や厚労省など多くの人にこの声を聞いてと訴えたいです」
(しんぶん赤旗 2020/11/26より)