「ここで暮らせることができて、生きる望みをもらいました」。アパートを肪問した厚木生健会会長の伊藤典雄さんに、佐藤弘伸さん(57)が笑顔でこたえます。「佐藤さんの思いを聞いて、シーンときました」と伊藤さんは話します。
助け合いの輪
いくつもの持病をもつ佐藤さんは8月、病気が悪化して通勤できなくなり、22年間勤めた会社を退職。働くことができず、たちまち生活が困窮しました。伊藤さんが応対し、生活保護を申請。決定通知証が届いた直後に転倒して大けが。やっと11月末に退院しました。
入院中は新型コロナ感染対策で面会できませんでしたが、病院を通じて連絡をとりました。佐藤さんは退院当日、電気・水道が止められていたアパートには帰れず、生健会の会員宅に宿泊。足の踏み場がない状態だった部屋の掃除も会員が手伝いました。
生活保護が受給できたので、医療費やアパート代の心配をせずに新しい生活に踏み出せました。佐藤さんは「生健会に相談していなかったら、どうなっていたか」と話します。
伊藤さんは「生活保護の相談をすること自体を恥ずかしいと思う人も多い。やっとの思いで相談に来た人に安心し信頼してもらえる活勁にやりがいを感じます」と話します。
同会に、数年なかったホームレスの人から相談が11月から3件続きました。近藤一幸事務局長は、 「ホームレスでも生活保趙は受けられますが、申請を本人が拒むことも多い。偏見が当事者に影響しています」と話します。
寄り添う活動
コロナ禍での相談も増えています。愛川町の50代男性は雇い止めされ、生健会に相談。持病もあり、伊藤さんが付き添い生活保誕を申清し、2週間で支給が決定しました。
同会は、困窮時に利用できる制度の活用にも力を注いでいます。50代の別の男性は、勤めていた介護施設が新型コロナで経営が悪化し退職を余儀なくされました。生活福祉資金20万円や3ヵ月の家賃給付を受け、減免制度を活用して国民健康保険料や国民年金保険料も免除になりました。男性は「たくわえがなくなるまでには就職したい」と話しています。
本来認められるはずの生活保護の申請が門前払いされるケースがあります。同会には「生後6ヵ月の赤ちゃんのいる母親が”実家に帰ればいい”と門前払いされた」「役所に7回通っても受け付けてもらえず、〃新聞を拾えば求人が載っている”と言われた」という相談もありました。両ケースとも、同会が立ち会った再度の申請で受理されました。
「私たちが同行して、正しい制度運用を求めたら、ほぼ認められます。やっとの思いで相談に来た人に寄り添う活動。やりがいがあります」と近藤さん。会が発足して6年、会員は1.7倍、機関紙「生活と健康を守る新聞」は倍加しています。
(しんぶん赤旗 2020/12/26より)