クローズアップ 横浜市 署名19万人超 それでもカジノごり押しか
住民投票条例案 審議3日で否決
2021年1月14日【地方総合】
横浜市議会臨時会が8日、横浜市のカジノを中核とする統合型リゾート施設(IR)誘致の賛否を問う住民投票条例案を、議会多数派の「自民党・無所属の会」と公明党の反対多数で否決しました。わずか3日間の審議でした。(神奈川県・石井拓生)
「林文子市長とカジノ推進会派は市民の声に背を向け、民主主義と住民自治を押しつぶした」―。住民投票条例制定の直接請求をした「カジノの是非を決める横浜市民の会」は議会閉会後にただちに声明を発表しました。
■16人に1人
同会が署名期間の2カ月間で集めた住民投票条例制定を求める直接請求署名は19万3193人分。請求に必要な法定数、約6万2000人の3倍を超え、市内の有権者の16人に1人が条例制定を求めたことになります。
林市長は署名が法定数を超えて直接請求が確実となった時点で、意見を付けずに条例案を提出する考えを示し、「住民投票が行われれば結果を尊重する」と表明していました。しかし、住民投票実施を審議する市議会臨時会が開会すると「住民投票の実施は議論の棚上げを意味する」「住民投票には意義を見いだしがたい」と反対の意見を付けて条例案を提出。市民から「自らの言動を簡単に覆す無責任な態度だ」「市民と議会を愚ろうしている」と抗議の声があがりました。
■市民に問え
臨時議会では3人が陳述に立ちました。
かながわ市民オンブズマン代表幹事の大川隆司弁護士は、住民投票により徳島市の吉野川可動堰(ぜき)設置計画が中止となった事例を挙げ、「IRの是非を住民投票で決めることは住民主権の実現だ」と強調。横浜港ハーバーリゾート協会の水上裕之氏は「山下ふ頭にはふさわしい開発の可能性があるにもかかわらず、ばくち場のカジノありきで推し進めるのは許せない」という同協会の藤木幸夫会長の意見を代読しました。
「市民の会」の藤田みちる共同代表は、「コロナ禍の困難の中で集められた19万3193人の市民の思いに『意義がない』と言えるのか。カジノのある街で暮らしたいのか、市民に聞いてほしい」と訴えました。
一方、自民、公明の議員は「横浜市議会は代表民主制が健全に機能している」「軽々に市民に判断を委ねるような問題ではない。議会で議論を進めるべきだ」「反対運動は市長選や総選挙につなげようとする政治利用だ」など市民の思いと運動をおとしめる主張を繰り返しました。
選挙で市政変えよう 小林節共同代表
「市民の会」の小林節共同代表は、臨時議会閉会後の記者会見で「政治は主権者の幸福のためにある。利権に突っ走る人は退場させないといけない。運動を市長選挙、市議会選挙という次のステージに発展させる」と力説。市役所前の集会には約200人の市民が集まり、「市民の声を聞かない市長と市議会を変え、横浜市政を市民の手に取り戻す。たたかいはこれからだ」と声をあげ、団結を誓いあいました。
(しんぶん赤旗 2021/01/14より)